空き家の利活用と聞いた時の反応について
- ”空き家の利活用”っていうフレーズが、嘘っぽくさえ感じて来た今日この頃。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?
地域活動家さんとお仕事を共にしてみますと、
スキームは良いのですが、
不動産屋さんの情報が欲しいのではないのですよ、と、
お客様の目が言っている気がする事が、多々あります。
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不動産屋が言うのも変ですが、
これ納得しているよ、安心して下さいね、と
伝えたいのです。
”空き家利活用”と聞くと、
なんでもできそうな感じがしてワクワクするのに、
”不動産情報”と変換が入った途端、一気に、ガックーンと
リアクションされます。
ですし、私もそうですよね、と縮こまりたくなります。
『不動産屋さん』を、いかに薄~くするかが、
エリアリノベーションの成功の秘訣なのかなと、思います。
今回は、上記被害妄想についてと、あくまで個人的な見解の、お話しです。
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どうやら学生さん、あるいは卒業生さん達の
創作スペース不足が慢性化している様です。
「うちに空き家があって、いっぱい物であふれてるけど良い?
それでよかったら、好きに使いなよ」という所有者さんが少ないのかと思います。
一方…
空き家はいっぱいあるのに。空いてるなら貸して欲しいのに。
という声も良く聴きますが、いざ紹介すると、
「山形市内から遠い」「駐車場が足りない」と言われます。
そしてご予算は大体、3万円が相場です。
3万円は良いとして、
「山形市外で良いです」「片付けします」「自分で直します!」
という人もまた、少ない様で…。
大家さんが良い人で、安くて、味のある物件。
たまに、そうした空き家が出ても、
競争率は高くて、全ての芸術家の手には渡らないのです。
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さて、話は変わり、
本日、村山市楯岡商店街の街歩きワークショップをしました。

私はなぜか、ゲスト。
いっぱい宣伝して誰も来なかったら心折れるかも~…と
自尊心防衛の為に、最初からあまり宣伝しない、という選択をしました。

というわけで、
2日間だけリールに出しまして、
かっこいい蔵の物件の見学もあるよ、と添えました。


来場0組も覚悟していたけど、なんと2組も来てくれて、
さらにありがたい事に、不動産屋さん仲間も3社来てくれて、
運営と、お子さんも入れると、10人で街を練り歩ける結果となりました。
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いざ、商店街へ着くと、
土曜日だというのに、私たちは誰ともすれ違いませんでした。
今日は県内で卒業式が開かれる日のせいもあるし、
そんな日の午後は、大抵の家庭ではお祝いしているか、
郊外のイオンや、回転寿司や、日帰り温泉に行っているのかもしれないです。
とにかく、商店街には人はいなかった…
2年前にも、同じ商店街の街歩きをしました。
2年前に比べて、シャッターが下りている気がしました。
という事は、つまり、
2年間誰にも使われていない空間がある、という事…
いや、きっともう何年も使われていないはずなのです。

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街歩きは2か所のチェックポイントを設けていました。
一つ目は、お菓子屋さんの事業継承。
二つ目は、お蔵の貸しテナント見学。
お菓子屋さんは参加者さんに言いました。
「この町を選ぼうとしてる理由は、どうしてですか?」と…
山形には大きく分けて、3つの地銀があります。
そのうちの2つの銀行が、この商店街から姿を消してしまいました。
「車社会に乗り遅れたと言ってしまえば、そうなのかも知れないが、
この辺に来る人というのは、銀行に来たついでに、店に寄るというのが常だった」
お菓子屋さんは寂しそうに、そうおっしゃいました。
私は故郷の青森を思い浮かべ、
村山市と雪の量は同じくらいの町で育ったなと思いました。
確かに、雪深い街で、わざわざ寒い中外出するのは、とてもおっくうでした。
今や銀行だって、スマホで解決できる。家の中で済んでしまう時代です…
それでも今日は、小春日和。
お散歩がとても気持ちが良く、
中学生くらいの頃には、友達と電車に乗って、
商店街へお買い物に行くのがとても好きだった事を
思い出していました。
今だってきっと…
目的地は何も、銀行だけとは限らない。
最近できた、食堂だって流行っている。
どうか、まだあきらめないで欲しい、と思いました。
家も土地も、
洋菓子も和菓子もお菓子作りのノウハウも、
設備も、
得意先も、
全部まだ残っているうちに、
継承者さんが来て欲しい。
一か所で頑張るより、やはり、街全体の底力を上げる必要がある。
それは急務である。
そんな使命を感じました。
「この自動ドアは50年もの。当時はめずらしくて、ドアの前に立って、踏みに来る人がいたりしたんですよ。いまでも現役です」
と、お菓子屋さんは誇らしげに教えてくれました。
優しいお人柄と、お店に残る年代物と、かわいいお菓子…
ずっと残って欲しいと思いました。

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参加してくれたのは、それぞれ違う分野のアート系の方々でした。
今回の街歩きは、実際に店舗を活用してみたい方に絞って参加を募ったから、
具体的に、物件のどんな所に魅力を感じるのかを、生の声で聞く事ができました。
ある方は、
「物件も充分魅力だし、もうすでに魅力的に感じる古道具があった」
とおっしゃり、
ある方は、
「自邸を購入する時も、探すまでに苦労した。
タイル張りの昔のままのキッチンが決め手だった。
どの家も、キッチンを新品に交換されていた物件ばかりで、そうじゃないって思ってた」とおっしゃいました。
嬉しくてたまらなかった。
私は、この様な価値観の共有がしたくて、
日ごろから古い物件にフォーカスしているのですから。
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不動産の色が濃くなると、空き家の利活用に求める
期待が薄れるのは、なぜだろう。
契約書の文面を見ると、
あぁ、このケースでもめたから、この条項が増えたのね、といつも思います。
生きづらい世の中です。生きづらい世の中が、少子化を生み、空き家を増やしています。
本来、ルールは何の為にあるのでしょうか。
不動産の場合は、
使用用途を守る規則と、支払の規則と、復元の為の規則の、
三つに分かれます。
良くもめるのは、復元の為の規則です。
・大家さんが直してくれない
・入居者さんが直してくれない
・退去精算費用が納得いかない
などなど…
だから、不動産の色が濃くなると、
ガチガチの契約書が立ちはだかり、
空き家の利活用という、
なんでもできそうなワクワク感から外れてしまう
空き家の利活用と、言うならば、
使用用途と支払いの規則に重点を置き、
復元の為の規則は、当事者間で最初に話し合って決めても良いのではないか?
と、個人的には、その様に思います。
そして、空き家の利活用で、営利は二の次で良いならば、
復元の縛りがゆるやかになれば、賃料も比例して、低くなると考えます。
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その様に、
『空き家の利活用』は、本来の言葉の意味を達成した方が良いと思うのです。
山形ビエンナーレで見た、古家×アートの素敵さが、忘れられません。





街にアートが広がれば、どこかからか、人が集まる。
それはきっと、ゆるやかで、やさしい街になる。
極論、借地借家法の必要が無い理想郷が生まれ、
お互いが信頼関係にあって、感謝しあえる貸家。
その集積で、
アートで街おこしをしたいな、
『良い人と良い人をつなぐのが、一番たのしい』
ので、
不動産屋としてではなく、不動産屋の知識を活かす。
これこそが、私のライフワークなんだと、実感した日でした。