2024.12.5 気温6度 くもり時々小雨
スノータイヤにしたというのに、まだ雪が降らない。
こんな冬は初めてだ。
冷たいし、滑って転ぶし、視界も悪いし、
放っておけば、重くなって、
家だって潰し壊す厄介者だ。
私の場合、雪を決して待ち望んでなどいないけど、
雪が降らないと、気になって仕方がない。
だんだん、変わり始める気候が、
食べ物や光熱費に化けて出て、夏も冬も、生活に介入してくる。
国の文化が、今もそれぞれに守られていたらならば、
もっと美しくいられた様に思う。
建物も、衣類も、メイクも、音楽も、平安時代が気になる。
美しい中にもしたたかさが隠れる平安時代。
日本が平安時代を保っていたならば、今どんなだっただろうか。
そんな時代からある農業。
ただし、今とは違うのが、農地の財産評価。
お米は税だった。
ほぼお金の役割をしていた。
そして、お米がお金の役割になってくると、
農地は、上流階級や寺に取られて、
自由に支配できなくなって行った背景がある。
案外、今も、そんな名残りがある様に思う。
現代でも、自分の農地を売買するのに、
所有者の一存だけでは売買できない仕組みとなっている。
農業委員会の許可が必要なのである。
(市街化調整区域内の農地の場合、特に厳しい)
自分の所有地なのに、他人の許可なく売れないのは、
古来の歴史の上にあるからではないか。
あれほど、文化は変わってきたというのに、
現代においても、農地は、厄介なのである。
そして、山形市の場合は、その審査がめちゃくちゃ厳しい。
あくまで、今まで見て来た中の一例だけれども、
農地は売る事が厄介なので、
農地の所有者は、耕作をやめ、
売らずに、好き勝手に使っていく事となる。
造成してしまい、家を建てていたり、
庭にしてしまっていたり、駐車場にしてしまっていたりする。
本来、宅地と農地は固定資産税が違うので、これではいけない。
そういう事が、悪い事と知って行っていた先祖は不在となり、
農地法が分からない、サラリーマンになった孫の代の方が困る。
そう、その農地は、違反したままの状態なのである。
違反している農地は、農業委員会が売買を許すことは、まずない。
もう一度、農地に戻す事が絶対条件となる。
先祖が好き勝手構築した家や庭を、
もう一度農地にする。
莫大な費用が掛かる。
つまり、現実的ではない。
例え、農地から宅地へ地目転用しようとしても、
一旦、農地に戻す事が絶対条件となる。
地目変更にも、やはり、農業委員会の許可が必要なので、
違反しているままの農地には、転用許可も下りない。
ただ…確か、好き勝手した”現況の宅地”は、
時効によって地目変更ができるケースもあるはず。
だけど、それを狙って違反をしている様な物件は
危険なカードでしかない。
不動産屋は、それを取り扱う程、慈善事業者でも、お人よしでもない。
こうして、現況とは違う農地が、山ほど増えて行く。
そして、許可が下りない為、売買が出来ないので、
ついでに農地付き空き家も増えて行く。
もはや、誰が悪いのか分からない。
奈良時代に墾田永年私財法で農地開拓ができたのに、
平安時代に班田収授法でせっかく耕した農地は取り上げられた。
農地に翻弄されるのは、令和にも続いている。
この負の連鎖を断つには、
辿れば、平安時代にまでタイムスリップしないと
農地を売買するややこしさは、改善できないのかも知れない。
だから、不動産屋さんは、農地と聞くと、「くうっ…」。と悔しくなる。
だけど、
最近お預かりする物件は、農地がついている事が多い。
農地を取り扱うには、不動産屋一人ではできないので、
(行政書士でも良い)
幸いにも、私には心強い土地家屋調査士がいらっしゃるので、
いつも知恵を絞ってもらい、助けて頂いている。
・・・
農地がついている物件。
それゆえ、売主様は農業従事者である。
今回は『違反していない』農地。
売主様も、とても誠実な方。
先ほども「雪が降らないねぇ」という話しになった。
山形の名物、サクランボは、
品種によって、収穫時期がずれるそうだ。
だけど、今年の猛暑で、全部の種類の収穫が重なってしまった。
30ha分の果樹園、
収穫を一気に行うのは、さぞや重労働だっただろう…
桃が好きだから植えてみたいと聞くと、
「桃もだめだった」との事。
収穫時期が早まって、
勝手にぽとぽとと、落ちてしまった桃が
多かったそうだ…
だけど桃は、家で食べる分だけ作っているらしいので、ほっとした。
先日頂いたラフランスは美味しかったと伝えると、
「ラフランスは今年は良かった」との事。
あぁ良かった、と思ったら、
「去年はだめだった」との事。
スマート農業などが進んでも、
なんともスマートにいかないのが、果樹だろう。
農業と聞くと、きらきらした自然のなかで作業するイメージをしてしまうが、
見えない作業が、ものすごく、
大がかりで、肉体労働な業種だ。
ビニールハウスへのビニール掛け、2mある果樹のワイヤー掛け、
果樹の剪定、草刈り、除草、農薬撒き、収穫、梱包、出荷…
「電動の剪定機をつかうから、バチンと切れるんだ。
少し暗くなると、ワイヤーと自分の指を見間違えて、
切断してしまいそうだよ」
私は40代で、もう夕方の暗がりになると、見えづらい。
自分の指を、電動工具で切り落とすさまは、想像が簡単だった。
危険で重労働、
おまけに、相手にするのは、自然の驚異。
「祈るしかない」と、売主様は手を合わせるのだった。
農業に憧れるが、こうしてお話しをお聞きすると、
ひゅんっと、猛スピードで憧れはどこかへと飛んでいく。
・・・
興味深かったのは、田んぼ。
田んぼはやはり、先祖代々の農地を受け継いでいるが、
高齢になり、そこまで手がまわらない。
そこで田んぼは、
「小作人」に貸すのだという。
令和の時代にも、「小作人」は存在するだなんて、
東京の人とか、びっくりするのではなかろうか?
現代も、小作人は、土地の賃貸借を
お金ではなく、作ったお米で納める。
つまりは「年貢」である。
ただし、今年は『令和の米騒動』と言われるほど、
米の価格は高騰した。
小作人と、あらかじめ取り決めた
年貢(米価格に換算して納める分)があるので、
米の単価があがると、納める米の量も減るのだそうだ。
「年貢では足りないから、今年は買ったんだよ」という。
自分の農地を無料で貸して、お金を払って、お米を買う。
なんだか、こんがらがりそうな話だった。
だけど、なんだかこの制度、
すごく不動産賃貸業と似ているな、と思って聞いていて面白かった。
・・・
まずは、この案件をしっかりまとめねば。
合法的に。
町弁にでもなったつもりで、
誰も期待していない正義感を胸に、
農地めちゃめんど、
せめて市役所の駐車場代無料にしてよ、
と思いながら、今日も市役所へ向かう。
私も「祈るしかない」
のであった。